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作者:邪神兵の作者さん
投稿日時:2007/03/09(金) 01:49:52
備考:地球壊滅してもVIPwww


334 :名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 01:49:52 ID:aQwhpb5M
 朝から百台以上のフォークリフトをフル稼働させて始まった積込みは、深夜零時にやっと終わった。
 俺の装甲列車『ノーザンライトエクスプレス』も十二分に充電し終わっている。
 大型トレーラーをさらに巨大化したような、このタイプの無軌道列車は今や珍しくない。
 地球全土に渡って連中に制空権を握られた今となっては、列車が大陸輸送の主役だ。
 それでも何故、ノーザンの運賃が他と比べて割増しなのかと言えば、確実性に寄る所が大きい。
 ネジの一つに至るまで、世界のどこにも追随を許さぬ技術で作られた純日本製だ。
 外殻を包む複合装甲は劣化ウラン弾十数発の連射に耐え、レンナル製ビームの貫通を許さない。
 車体の大きさこそ日本のJRと変わらないが、兵装は地球の全輸送列車中最強と言い切れる。
 釣り目のシャープな面構えをしたノーザンは、ガラム星からの侵攻により壊滅的打撃を受けた欧州へ、
中国・重慶から食料品や生活雑貨、野菜の苗を運び、帰りには武器を満載して戻る予定だ。
 石油や石炭などエネルギー輸送は流石にタンカー原潜に負けるが、速度と便の多さは魅力がある。
 展望車から外の荷運びを見守る俺のもとへ、駅事務所から電話がかかってきた。
『おれだ、駅長の曹だ。健吾、そろそろ出発できそうか』
「ああ、こっちは何時でもいいぞ」
 言ってから俺はちらと貨物用プラットホームを見た。黄色に塗られた日本通運のコンテナ、
真っ赤な農産物のコンテナ、真っ白なFedexのコンテナ等が、中身が空になったところで
それらを駅まで運んできたトレーラーに積み返されているところだった。
 最新型の大型ロボットリフトが慌しく動く一方、ホームの片隅では屋台が出ている。
 豆炭の釜でキビ粥や唐揚げを作っているのは皺くちゃの爺さん。
 屋台の粗末なベンチには労働者が集まり、その下では干魚を貰った犬が、しっぽを振って食事中だ。
 最新型の輸送列車が居並ぶ駅でくり広げられる、十九世紀とさして変わらない食事風景。
 真にもって中国的というか何と言うか、日本では大崩壊後さえちょっとお目にかかれない変な光景だ。
 しかし雪のちらつく深夜に揺れるストーブや提灯の灯は、紛れもなく人々が暮らす営みの証。
 俺がこれから向かう場所に、そういうものは一切ない。
『実は……さっきから変な電話がかかっててな』
 曹が言葉を濁したので、俺は受話器を持ち替えた。「どんな電話だ?」
『いやあ、次の列車はウイグルを通るのかどうか教えろって言うんだよ。そんなの言える訳ないだろ』
「男の声か? 女の声か?」
『男だ。でもそれだけで信用できねえ。レンナルとか現地軍に利用されてる男もいるしな』
 俺は暫く黙ったあと、電話を兼ねた手元の端末にルート設定画面を呼び出した。
 今回の旅は、確かにウイグル自治区を通過する予定になっている。
「……教えてくれてありがとう。念のために予定を早めて、五分後に出発する」
『そうか、わかった。くれぐれも気をつけてな』
 通話を終えようとする俺と曹の間へ、喧しい声が割り込んできた。
『けーーんーーごぉおーーー! また一緒に旅が出来るなぁー! フヒヒ!』
 聞き覚えのある声に、俺は思わずあんぐり口を開けた。
「お前……ヤンか」
『そぉだよぉ~! 私メリーさん、貴方の後ろにいるのっ』
 慌ててノーザンがつけているのと反対側のホームを振り返ってみると、窓の向こうをゆっくりと、
油と煤でゴテゴテになった列車が滑り込んで来るところだった。俺の悪友の列車が。
 ヤンの列車は金龍8型というタイプで、お世辞にも性能がいいとは言えない。
 名の通り龍を模した機関車に引っ張られ、しかも貨車が途中から純正でないので文字通り竜頭蛇尾だ。
『あ、言い忘れたが今回の随行列車はヤンだ。よろしく頼むぞ』
「おい曹、そう言う事は前もって言え! 変な電話よりこっちがトラブルだアホ」
『あっ、あっ、健吾がいま酷いこと言ったっ! 酷いこと言った!』
「はいはいわかった、わかったからお前は黙れ」
 よく見てみると、ヤンの列車には妙なパネルが取り付けられている。
 何に使うのか知らないが、そういう無駄なものがゴチャゴチャついているのが奴のクオリティ。
 俺は一方的に電話を切り、機関車に移動すると発進準備に取り掛かった。


335 :名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 01:51:49 ID:aQwhpb5M
***
 青林を出るまではネットも繋げたので、VIPで駄スレを立てたり隣のヤンとPCで通信対戦をしていたが、
雪の山林地帯が近づいて来るにつれ、さすがに電波を出すわけにはいかなくなった。
 かつての大規模攻撃による気候変動は凄まじく、降雨が少ない筈のこのあたりの積雪は今や60cmを超える。
 外の気温はマイナス15℃。高速移動する列車の表面温度はもっと下がり、触れるだけで危険だ。
 電力ロスを減らすため暖房は極力セーブし、俺はベッドに潜ってDVDを見る事にした。
 ノーザンの住居用貨車は他の貨車と外見上は何ら変わらず、機関車からも離れている。
 内部は畳にカーペットを敷いて、コタツとベッドでワンルームマンションぽくしてある。
 やはり日本人ならこうでないと。外から微かに聞こえる吹雪の音と、列車の振動が眠気を誘う。
 だが、今夜ばかりは心からぐっすり眠ることはできない。
 山間部にわずかに広がる平原は輸送列車の墓場となっており、焼けた機関車や装甲車が転がっている。
 恐らくはレンナル帝国の戦闘UFOに撃破され、貨車ごと商品を強奪されてしまったのだろう。
 この辺りは近頃急に勢いづいてきたロシア軍に攻撃をしかけるため、帝国の戦艦が頻繁に行き来する。
 加えて戦車や武装ヘリを持つ帝国現地軍から、正規軍くずれの山賊まで出る始末。
 俺の仕事は列車に積まれた武器を駆使してそいつらを退け、荷物を無事に届ける事。
 こんな時代に……いやこんな時代だからこそ、俺のような引き篭もりにも仕事がある。
 何せ戦闘時以外は部屋で寝ているだけでいいのだから。この列車が俺の家で、俺の殻だ……
 アニメを見ながらゴトゴト揺られてまどろんでいると、ふいに枕元の電話が鳴った。
『健吾、起きろ! 大変だ!』
「おいヤン、通話はできるだけやめろって……」
『うっせえ寝ぼけんな! 今すぐ外みろ!』
 ヤンの気迫に訝りながらカーテンを開けてみて、俺は一気に眠気が吹き飛んだ。
 窓の外の平野に、点々とまばらな光点が見える。
 時速二百キロで進む俺達の列車に随行するのが数点、ちょうど前方の峠に固まっているのが多数。
「馬鹿な! レーダーに反応はないぞ! 警報だって鳴らなかっ……」
『俺だって偶然窓開けて見つけたんだ。あれはレンナル帝国の〃飛行騎馬隊〃だ!』
 人付き合いの悪い俺だが、こんな仕事をしている以上は聞いたことがある。
 帝国の陸戦隊は時折、大型兵器を使わず、わざと小型の飛行バイクに近距離武器で襲って来る。
 それは彼女らの文化で言うところの『じかに相手の返り血を浴び、自らの美しさとする』戦い方で、
この戦法を指示する指揮官は往々にして貴族出身の娘が多いらしい。
 返り血で赤や緑や青(これまで地球以外の星は、帝国艦隊の前にあっさり膝を折ったそうだ……)
にまみれた自分達の姿を至高の物として捉え、〃宇宙最強の女戦士〃を謳う彼女たち。
 僭越ながら俺に言わせてもらえば、そんなもんはただ野蛮で下品なだけだ。
 異星人の血でベトベトになって法悦するアホどもを、到底美しいとは思えない。
 そして何より俺の本音はこうだ。
「――化粧品にされてたまるかーーッ! 俺はもっとヒキコモるんじゃいッ!」
 叫ぶと同時にデスクの赤いキノコ型ボタンを拳で殴り、兵装システムのスイッチを叩き入れた。
 全長二キロにも及ぶノーザンの各所に連結された戦闘車が起動し、自動砲塔が動き出す。
 一瞬のラグのあと、各車の戦闘員から次々と内線の状況報告が入ってきた。
『こちら7号車から12号車、全武装異常なし』
『こちら24号車から30号車、全武装異常なし』
『こちら60号車から……』


336 :名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 01:53:41 ID:aQwhpb5M
***
 疾走する列車を峠から見下ろし、飛行バイクに跨った女はゴーグルの奥で瞳を燃え上がらせていた。
「武装列車が二つか。フフン、今宵の狩に相応しい獲物だ……」
 女の名はハイネ・リーリャ・スワローザ16世。ガラム語の〃ハイネ〃は高位貴族を表す称号で、
スワローザ家は帝国が宇宙進出を目指した初期から、幾多の戦乱を超えて続く屈指の名家である。
 ……と言えば聞こえは良いが、スワローザ家の部隊が狙うのは民間人など弱い相手のみ。
 それで生き残ってきたのだから、実質誇れるのは歴史の長さしかないという家柄だ。
 今も〃戦果〃という名の虐殺を求め、人口の多いインド、中国、ロシアを北上する旅の途中だった。
 しかし、神の悪戯か悪魔の芸術か、この血筋の者は美しい。
 白磁の肌に、すっと通った鼻筋。二重で切れ長の眼は矮小な心とは裏腹に、気高き聖女を思わせる。
 すらっとした足先から手首までを蛇革の防弾タイツで覆い、くびれたウエストには黒ベルト。
たっぷりした下半身には、タイツの上から股間へキュっと食い込んだ銀色のTバックをはいている。
 Gカップの胸にはスワローザ家の紋章が入った鎧を着こんでいるが、これは装飾的な意味合いが強い。
 彼女ら指揮官クラスにとって、軍装に一番大切なのは外見である。機能性は二の次だ。
地球の貴族が舞踏会で優美を競うなら、レンナル貴族の子女は戦場に於いて冷酷さと強さを競う。
 そして特筆すべきは首から胸元で、これは数日前に手に入れた白と黒の熊の毛皮で巻いてある。
 この熊を殺す時、飼育係の男は半死半生にされながらも泣き叫んだ。
『やめてくれ、パンダを殺さないでくれ! 地球に、いや宇宙に、もう何頭もいない生き物なんだ!』
 だから彼女は男の頭を踏み潰した後、パンダを殺して毛皮を剥いだ。
 なぜなら宇宙でも希少なる生物の毛皮こそ、自分の高貴なる肉体を飾るに相応しいからだ。
「フフフ。あの列車が、この毛皮より珍しいものを積んでいると良いのだがな」
 美しい顔を嗜虐的に歪め、リーリャはこれから来るであろう流血を想像してほくそ笑む。
 そしてパンダの毛皮をバサリとなびかせ、ビームライフルを振り上げて一族郎党に指令を下した。
「者共、かかれぇーーい!」
「ヒャッホォーーーウ!!」
「イイヤッホォーーーウ!」
 半分気が狂ったかと思える程の奇声を上げ、バイクに跨った女兵士数十人が崖を下った。
 次々と列車にビームピストルの発砲を繰り返し、吹雪の平原に青白い火花を散らす。
 それに反応して黄色の列車は速度を落とし、銀色の列車の影に隠れた。
銀色の列車についた戦闘車の砲塔がぐるりと向き直り、彼女ら目掛けて一斉に砲門を開く。
 ――ドゴォッ!
 雷鳴のような発射音と共に大口径滑空弾が飛び出し、リーリャの部下達に襲い掛かった。
 だが哀しいかな、砲は中型兵器を想定したもので、飛行バイクのような小さな目標は上手く狙えない。
 弾は一騎を風圧で転倒させたに留まり、遥か遠くで空しく爆発した。
 転んだ兵士はリーリャのすぐ前にいたが、リーリャは止る気など毛頭ない。
「ひっ、ひいいっ! リーリャさまああぁぁああッ!」
「どけーっ、邪魔だーーッ!」
 そのままバイクで轢き潰した。
 ――ブチィッ!
「ぶぐっひぎぃいいーーーっ!」
 兵士の体は腹で真っ二つ。ブタのような悲鳴を上げ、鮮血を散らしながら飛んでいく。
 やがてドサッと窪みを作って、彼女は雪に埋もれて消えた。
 リーリャにとって一兵士の命などより、狩の楽しみのほうが遥かに大切だ。
 追い詰められて弱った獲物を、じわじわといたぶり殺す。そこに無上の快感を感じる。
 それは汚らしい男奴隷とのセックスなどでは到底感じられない、子宮に響く女悦なのだ。
「くはははは、長いだけのデク列車め、せいぜい足掻くがいい! 焼きヘビにしてやるわ!」


340 :名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 19:00:08 ID:aQwhpb5M
 黄色い列車は屋根から迫撃砲を撃ち出したが、照準装置が悪いらしく空振りばかりだ。
 雪の平原に弾をばらまくが、リーリャ達には当たらない。
 と、銀色の列車の側壁がパカリと開き、そこから小型銃座のついたパンタグラフが伸びてきた。
 乗っているのは女だ。ハイレグのレオタードにニーソと手袋、ブーツ。いずれも黒。
 頭にはヘルメットはおろか、ゴーグルさえ無い。
 殆ど半裸に近い服装なのに、彼女は猛吹雪の中瞬き一つしない。
 苦痛、恐怖、いかなる感情も伺えぬ顔で、女は大型機銃を撃ってきた。
 弾は近くを併走していたリーリャの部下に襲い掛かり、バイクに当たってガツン、カキンと火花を上げる。
 一瞬後、飛行バイクのエンジン部から火が出た。軌道はヨレはじめ、制御が失われた。
「あうっ! はひぃっ! いや! いやぁーーッ!」
 グラグラ揺れるバイクを何とかしようとした挙句、彼女はバイクの爆発で前方へ吹き飛んだ。
 前にあったのは凍った木。その枝へ彼女は、時速二百キロ以上で顔から突っ込んだのだ。
 枝は口から突き刺さり、ヘルメットを割って白い歯を叩き折り、喉を通って腸を破りながら尻へ突き出た。
「ぐあ……ごぉ……あぉごおおぉぉーッ!」
 彼女にとって不幸だったのは、脳が無事なまま一瞬で串刺しにされたが為、絶命できなかった事だろう。
「おぐ……ご……はぁぁ……」
 彼女は肛門から内臓をひり出しながらカエルのように空を掻き、悶え苦しみ抜いて息絶えた。
 リーリャはそんな事など気にとめず、銃座の黒レオタ女どもを撃ち落す事に必死になっている。
 不思議なことに、ビームが至近距離で装甲にガンガン当たっているというのに、女達は怯まない。
(何だこいつらは。本当に地球人なのか? だとしたら大した度胸だが……)
 念のため、ゴーグルの無線機をいじって列車内で交わされる通信を傍受してみる。
 いくら暗号化されていても、レンナル帝国の科学力にかかればこの程度、玩具を弄るに等しい。
『こちら34号車、ナンバー427が右腕故障。ガトリング操作続行不能』
『わかった、ナンバー427を戻して代わりを出せ!』
『アイサー』
『87号車戦闘中。跳弾によりチーフが大破』
『んがぁクソッ! ナンバー114、お前が指揮を引き継げ! 連中をヤンの列車に近づけるなよ、ボロいんだから』
『アイサー』
「……〃故障〃? ……〃大破〃だと?」リーリャは首を傾げる。
 指示を出しているのは男だが、その他に聞こえるのは女の声ばかり。
「まさか!」
 エンジンのスロットルを上げると、止める部下を押しのけて一気に列車へ接近した。
「リーリャ様、危険です!」
「うるさい!」
 滑るように接近すると、よそを狙っていた銃座の女は慌ててこちらに狙いを改める。
 だが、リーリャの方が一瞬早かった。
 二発撃ったビームライフルの弾は銃手の腕を吹き飛ばし、太腿に穴を開けた。
 断面から現れたのは血肉ではなく、空気圧を利用した人口筋肉のチューブとコードであった。
 右腕を無くした女は痛がるでもなく、ちょっと驚いた顔をした後びっこを引いて列車に戻っていく。
「こちら60号車、ナンバー12戦闘不能。指示をお願いします」
 機械的に無線で呟いている彼女の後姿を見て、リーリャの頭にたちまち血が昇った。
「きっ、機械のドローン兵だと! おのれ、馬鹿にしおってぇぇーーーーッ!」
 背中に背負ったビームサーベルを引き抜くと、銃座の通路になっているパンタグラフを両断した。
 銃手のナンバー12は指示を受け取る事もできず、落下する銃座に巻き込まれた。
 皮肉にも、彼女は自らが守っていたノーザンライトの車輪に轢かれた。
 高速移動するノーザンの大口径車輪にグシャグシャに踏み潰され、安っぽい花火のように爆発する。
 それでもリーリャの怒りは収まらない。リーリャ・スワローザは血が欲しいのだ。
 怯えて小便を撒き散らし、情けなく震えて泣きながら死んでいく地球人が見たいのだ。
 ロボットを壊したくて列車を襲ったわけではない。
「おのれ、おのれ、おのれ、おのれえええええーッ! こんな物、潰しても何にも面白くないわ!」


341 :名無しさん@ピンキー:2007/03/09(金) 19:01:30 ID:aQwhpb5M
 怒りにまかせてビームライフルを連射し、銃手のドローン女を片っ端から撃ち落してゆく。
 そして代わりの要員が出てこないうちにノーザンから距離を置き、無線機に怒鳴った。
「一般兵の車両を出せ! この列車に乗り移るぞ!」
『はい、リーリャさま!』
 一般兵とはいわゆる〃スワローザ家以外の人間〃で構成された女性部隊で、リーリャにしてみれば
奴隷同然か、少しましな階級ぐらいにしか思っていない。事実、扱いは常に捨て駒だ。
 それはそうだろう、平民ごときにおいしいところを持っていかれては、何のための貴族か。
 すぐさまやってきた高機動兵員トラックから梯子が伸び、銃座が出ていた穴に連結される。
 小銃を装備した一般兵が列車に突入すると、途端に列車内で交わされる無線の密度が高まった。
『こちら60号車、乗り移られました!』
『アイタタタ…… 全員、白兵戦用意! この先にカーブがある、それまで押し返せ!』
『アイサー』
『いいな、絶対に持ちこたえろ!』
 リーリャも自分の無線に怒鳴る。「急げ、この先にカーブがあるぞ!」
 真っ先に列車内に飛び込んだ一般兵が、中から飛び出したドローン兵と掴みあいになった。
 すさまじい風圧の吹雪の中、横幅50cmもあるかないか解らない梯子の上で、二人……
いや、一人の帝国兵と一騎のドローン兵が腕をからませ、乳をぶつけあい、足を絡ませる。
「くそっ、このっ! 離しなさいよ! 離せっ!」
「離しません。たとえ私が壊れても!」
 もみ合った挙句、二人はからみ合ったまま梯子から転落した。
「ひいぃっ、いやあ、いやーーーーーッ! ぐぎゃあああああああああ!」
 帝国兵の方は凄まじい悲鳴を上げながら、ドローンは無言のまま、ノーザンライトの車輪に轢かれた。
 血肉と電子部品がミキサーにかけられ、二人の体は混じって雪原に散ってゆく。
 どちらがどちらだか、もうわからない。
 そんな様子を、リーリャは部下と一緒に冷笑しながら見ていた。
「ハハハ! 平民ごときはドローンと相打ちがお似合いだな」
 やがて兵員トラックが横付けされた戦闘車が沈黙し、中から一般兵がライトで合図を送る。
「よし、制圧が完了したぞ。ものども、続けぇーーーーッ!」
「ハッ!」
 リーリャは配下を引き連れて、ノーザンライトの内部へ転がり込んだ。


















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