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作者:クレイバンの人、通称クレイさん
投稿日時:2006/01/08(日) 19:12:32
備考:時代もの


「そこまでだよ」
トンッと鋭く小さな痛みが匙彦の背中に走る。
後ろには毒を舐めて死んだはずの浅黒い肌の女中が小刀を匙彦の背中にあてていた。
「ちっ、死んだはずじゃあ」
「お前、あたいが飲むとこみたのかい?せいぜい舐めてるところか喘いでるところだろ。」
「やれやれ、まんまと騙されたってわけか。しかし何者だいあんた?ただの女中じゃねえな」
「お美代?」
おせんも状況がわからぬとでもいうようにとぼけた顔をしている。
「フンッ。考えてもみてごらんよ。
 一国の姫様をお守りするのに護衛の侍だけじゃあ、とても足りないってことさ」
「くの一か……」
確かに男だけでは守れない状況というのもあるだろう。
いつも身の回りの世話をする女中に紛れ込んでおけば、緊急の事態に対応できる。
匙彦はまだまだおのれが半人前だと心の中で恥じていた。
「想像にお任せするさ。フフ、お前には色々聞かせてもらうよ。
 事の真相まで辿り着いてるようだけど、あたいたちの始末を命じたのは誰かとかねぇ」
おせんは安堵のため息をついていた。何やらよくわからないが助かったようだ。
しかし、こうなると惚れた女の弱みか、
さきほどまで自分を殺そうとしていた匙彦を憐れに思う。
「しかし、お前、始末屋としては二流だね。
 殺したかどうかの確認もしない、始末の対象とくっちゃべってすぐに殺さない。
 それとも何かい、やっぱ情を交わした女には鬼になれないってこと。」
挑発するかのように匙彦にお美代は言い放つ。
「否定……はできねぇなあ。まだあんまりこれを稼業にしてから日も浅いしな。
 けどな、俺はそうだが他の奴は違うぜ」
そう匙彦がいうと同時にお美代は首の襟を捕まれ後ろにひっぱられた。
「な、なに」
状況を判断できぬまま、今度は足をひっかけられ、ペタンと尻餅をつく。
そして最後に首筋にある急所に細く長い針が刺し込まれた。
「アガァッ」
目を見開きフルフルと身体を痙攣させるお美代。
なおもとどめとばかり、背中からもう一本の針が心臓に吸い込まれる。
心臓を貫き通し、薄いが形のよい乳房も貫き、最期に彼女の黒い乳首からその先が飛び出した。
「ハァンッ!」
フゥッと見開いていた目を閉じ、お美代はまえのめりに崩れ落ちる。
おせんが匙彦の肩越しにみたお美代を刺した者の正体。それは死んでいたはずのおけいだった。
いや、よくみれば顔は似てもにつかない。
確かに髪と着物は同じだが、そこにいるのは女とみまごうばかりの小柄な優男である。
「すまねぇな銀次」
後ろもふりかえらずに匙彦はそういう。
「今回までだ。最初の五回だけは始末を助けてやるってのが掟だからな。
 しかし情けねえなあ。」
「面目ない。まさかこんなことになるたぁ思わなかった」
銀次と呼ばれた小柄な男はかつらと着物を脱ぎ捨て、褌姿となる。
「お、おけいは……」
震えながら、銀次におせんは訊ねる。
「おけい……ああ、この着物の女か。
 外で素っ裸で眠っているよ。もう二度と目は覚まさないけどな」
やはり殺されたのだという事実におせんはうちのめされる。次はあたしの番だ。
そんな、おせんを尻目に銀次はたんたんと寒い寒い、とつぶやきながら、
部屋の外にあった自身の着物を着込んでいる。
「さて、と匙彦どうする。俺はこれから姫様に引導渡してくるが………
 てめぇができねえなら、この女もついでにやってやろうか」
「いや、いい。こいつは俺が始末する。」
「……そうか、ま、もう助けはいらねぇよな。………さっさと終わらしてくるわ」
そう言って部屋の障子を閉めて出て行く間際、
急に立ち止まったかと思うとふりむきもせず、低い声で匙彦にむかって冷たく言い放つ。
「掟だよ、匙彦。覚悟決めろ。下手うつんじゃねぇぞ。俺はあんたを殺したくはない……」

***

「おほほほほ、愉快じゃのう。なんとまあ綺麗に燃えたことよ」
「それはもう寧姫様、私達、女中一同、丹念に仕込みましたので」
ほとんどの者が寝静まる夜中に二人の女のささやき声が、寧姫の寝室からこぼれている。
寧姫の声にまだ三〇になるかならずの妖艶な雰囲気をもった女中頭が答える。
「さて、次は何をして楽しませてくれるのじゃ?」
「そうですねぇ…今度は丹波屋に忍びこんであやつめが貯めこんだ財で
 この部屋を埋めて見せましょうか。」
「あはははは。丹波屋のおやじの顔が見物じゃな、それでは期待しておるぞよ」
「ははぁ」
深くお辞儀をし、退出する女中頭-朱路。女中とは仮の姿、彼女もお美代同様、姫様付きのくの一である。
本来なら雇い主である藩主の手前、いさめなければならぬものを、
盗んだ金はどうしてもよいという姫の言葉に眼がくらみ、姫の狂気の道楽に付き合っていた。
退出すると、早速次の指令を伝えるため、部下の女中のもとへと急ぐ。
        ガサッガサッ
庭の茂みから何か音がする。曲者かと朱路は警戒する。
「私です」
そこから現れたのはつい、朱路が最近知り合った浪人の継輔と名乗る男だった。
明日をも知れぬ貧乏侍だったので、これは利用できると先日、朱路が身体と金で買った男だ。
男の甘い顔が気に入ったというのもある。
「ああ、丁度よい。」
静かに庭に出て、今度の計画の実行犯にさせるべく、彼の側へと近よろうとした瞬間、
急に首が絞まったかと思うと木を擦る摩擦音と共に宙に吊り下げられる。
「ハフゥゥゥゥファアッァァァ……」
手足をバタつかせ、悶え苦しむ。声がほとんど出せない為、目と手で助けを継輔に請うが、
何も動こうとしない、暗いために表情はわからぬが助けてくれるつもりはないようだ。
死にたくない。その思いがこの状況において少し冷静にしてくれる。
女中頭は懐に短刀を差し入れていることを思い出し、
あわてて取り出し、自分を吊り下げている糸を切ろうとする。
彼女は必死でわからなかったが、その動きをみて継輔は刀を抜いて歩み寄っていた。
朱路の抵抗が功を奏し、やっと首を絞めていた糸が切れた。
継輔の構えていた刀がここぞとばかりに、
股間から彼女の落下に逆らうように下から上へと斬り上げる。
彼女の身体は着物と共に真っ二つに裂かれるはずであったが、さすがはくの一。
空中で身をひねることで朱路はなんとか避けた。
しかし着物は見事に斬られブルンッと熟れた豊満な肉体を晒した。
数歩後ろに下がりながら態勢を立て直す朱路。
月明かりに照らされた白く熟れつつもひきしまった裸体が美しい。
「あんた、ただの浪人じゃないね。何者だい」
継輔を睨みつけながら訊ねる。
「始末屋ですよ。表じゃ裁けぬ悪を始末するね。
 しかし、私も驚きました。あなたを抱いたとき、
 いやに鍛えられた身体だと思いましたが、忍とはね。」
どうやら、姫様の悪事は露見していたようだと朱路は舌打ちする。
さて、逃げて助けを呼ぶか、このまま戦うか。なんせ継輔だけでなくあと一人いる。
はたして逃げられるものだろうか。
「もう一人には手を出させません、一対一で勝負をつけましょう」
朱路の逡巡を解したかのように継輔は彼女にむかっていう。
「闇討ちしようと考えていた奴のいうことか!」
そういいながらも、朱路の腹は決まった。継輔を倒し(いや牽制するだけでもいい)、
もう一人をふりきってそのまま逃げる。姫などもう知ったことではない。
十分稼がせてもらった。他藩に落ちのびて、悠々と暮らそう、と。
継輔に小刀を構え豊満な乳房を躍らせながら迫りよる朱路。
継輔の一太刀をかわしきり、その勢いのまま塀をとびこえ逃げる算段である。
だが彼女は見誤っていた。継輔の剣技の鋭さを。
        一閃!!
朱路は継輔の横をなんとかくぐり抜けられたと安堵し、そのまま走り抜けようとする。
しかし、足がどうにも前に進まない。怪訝に思いおのれの裸体に目をやる。
そこには肩から腰に斜めに走った一筋の赤い線。そして、その線がズズッとずれていく。
「ひぃっ」
数瞬遅れて斬られた一筋の線から血飛沫が噴き出し、
朱路の裸体を朱に染めながら身体の上半身が斜めに地面にむかって落ちていく。
「いやぁっ」朱路そのか細い叫びが最期の叫びとなった。
朱路の地面にぶつかると視認した数瞬後、視界が暗転し意識が永久に霧散する。
「やれやれとんだ手間をかけさせてくれますね」
闇の中へとつぶやく継輔。その暗闇からがたいのいい男があらわれた。
「懐刀を持ってるなんて思わなくてよ……やっぱり普通の女中ってわけじゃなかったようだな。」
「詰めが甘いのが剛三の悪いところです。匙彦みたいに新米じゃないんですから……
 まあ過ぎたことはいいですけど。さて残るは姫様だけですね……」継輔が答える。
「大丈夫、銀次が上手くやってくれるだろうさ」


















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