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作者:クレイさん
投稿日時:2006/07/07(金) 01:53:23
備考:カイリシリーズ、新章


カイリが左右を深い森に囲まれた峠道を越え、谷間の村に辿りついた時、目の前に広がっていたのは、この世の地獄とも思えるような光景であった。
槍で股間から串刺しにされた女、首や手足がありえない方向に折れ曲がり事切れている少年。
身体が真っ二つにわかれた白髪の老女、脳天から短剣を刺されたままの青年……
カイリの視界には惨たらしい死体が山のように散乱していた。

ざっと数えて二十人ほど。村の規模から考えてほぼ全体の五分の一程度だろうか。
飾り物が村中にみられる。中には仮装したままの亡骸もあった。
時期から考えて、収穫祭か何かが行われていた矢先に襲われたのかもしれない。
カイリはこの残虐非道な行為を前に怒りに震えながらも、村に足を踏み入れた…………

刹那、全身を舐めつくし飲み込まれるような感覚に襲われる。
経験したことのない、不快な症状に思わずよろめくカイリ。
(この感じは一体? 何だっていうんだ……盗賊か山賊が村人を殺したってわけじゃないのか……)
全身にまとわりつくような邪気を追い払うかのように頭をブンブンと左右に振っていると、
遠くの方からかすかに、若い女の話し声が聞こえてきた。
「これで、終わったかな」
「いや、まだ隠れている奴がいるかもしれないよ」
「しっかし、これだけ一方的なんて快感ね。自分の命をチップにしないで好き放題殺れるなんて。団長もいい仕事みつけてきたもんだわ。報酬もいいし、あ、あとで色々漁ろうよ。宝石とか隠し持ってた奴もいるかもしんないし」
血に濡れた剣を持ち、鎧を着込んだ若い三人の女が、
むせかえるような血臭のたちこめる場を平然と歩いてくる。
鎧といっても戦争時のような重装備ではなく、動きやすさを重視した軽装である。
それぞれ形状は異なるが、ほとんど胸と股間だけにしか装甲がない。
二人は鎧の下に、肌に吸い付くようにフィットしたインナースーツを着込んでいるが、
残る一人はその鎧の下には何も身につけておらず、日に焼けた小麦色の肌を晒している。
三人とも細身ながらも鍛え上げられた身体である。
会話に夢中になっていた彼女たちの眼に、村の入り口に立っているカイリの姿がやっと飛び込んできたのか、くだけた雰囲気をガラッと変え、剣を構えて走りよってくる。

二十を過ぎたかどうかといった年齢、幼さの消えた精悍な顔だち、金属製の鎧に身をつつみ、腰に長剣を携えている。
一目で剣士であると推測できるカイリをみては、彼女たちが警戒するのも当然であった。
カイリは剣を抜かず、じっと女たちを睨みながらそばに来るのを待った。
剣が届くか届かないかの間合いで、三人は散開しカイリを囲む。
「……おまえたちがやったのか」
「そうよ、剣士様。こいつらを殺したのは、あ・た・い・た・ち。
そしてこいつらの仲間入りをするのがあんたってわけ。」
小麦色の肌を露出した女がカイリを挑発するように云う。
カイリは顔をしかめながらも彼女たちに問うた。
「なぜ、こんなことを……村の人たちに、ここまでされる咎があったというのか」
「さぁ、知らなーい。あたいたち雇われただけだもの。」
「なるほど、盗賊も最近は雇われる時代なんだな」
挑発でもなんでもなく、カイリにとってはただの素直な感想であったのだが、
その言葉は彼女を怒らせるには十分な効果があった。
「盗賊なんかと一緒にすんじゃないよ!あたいたちは誇り高き傭兵さ。セナイラ傭兵団っていやぁ、あんたも聞いたことあるだろ」
……確かにカイリも聞いたことがあった。
『セナイラ傭兵団』――団長の名を冠したその傭兵団は、女だけの集団で、その構成員はあまり多くなく、四十人に満たないという。
彼女たちは戦争屋というよりは何でも屋で、金さえもらえれば、どんな非道なことでも引き受けることで有名であった。
『誇り高き』などとはとてもいえない集団で、実際の戦争に参加するより、領主にしたがわぬ領民の虐殺など、道義的に避けるようなものがとにかく多い。
それも喰うため仕方なくというわけではなく、団長はじめ団員は好んで 汚れ事を引き受けるという噂である。
眼の前の惨状をみて、どうやらその噂は本当のようだとカイリは思った。
「ああ、聞いたことがあるな。じゃあ……どうせ俺も殺すつもりなんだろう。
そうだ、最後に聞かせてくれ。誰に頼まれたかは知らないが……こんなことをして罪の意識はないのか」
冷静をよそおいながらもカイリはそう彼女たちに訊ねる。
その回答いかんで、彼女たちの運命が決まるのだがそんなことは、もちろん知る由もない。
クスクスクス。忍び笑いが三人の女傭兵の口元からこぼれる。
そして我慢できなくなったのか、それがひどい嘲笑にかわる。
「あひゃひゃひゃひゃっ。あんたどこのお坊さんだい。罪の意識ぃ? それって何なのかしら。あたいはね。すべてを思うままに奪うのがモットーなの。しかも、報酬をもらいながらなんて最高じゃない。何度も言うけどあたいたちは傭兵。盗賊なんかと一緒にしないで。ちゃんと雇い主の役に立ってるんだから」
……この三人の中ではリーダー格なのだろう。
さっきから不快な物言いをする小麦肌の女の言葉で、カイリは腹を決めた。

シュッッ
すさまじい速さの踏み込みとともに、長剣が鞘から振り抜かれた。
傍目からは、ただ女傭兵との間にある空間を薙いだようにしかみえない。
挑発していた女傭兵も、何が起こったかまるで認識できずにキョトンとしている。
「な……なに。驚かすんじゃないよ。もういい、さっさと死にな」
少しどもりながらもカイリへ斬りかかろうと剣を振り上げる。
カイリは微かに苦笑を浮かべただけで、避けようともしない。
女傭兵がその薄笑いに激昂し、カイリを斬り殺そうと剣を振り下ろそうとした時、
彼女の胸の中心にあった鎧の止め具が真っ二つに割れた。
鍛え上げられた肉体には不似合いな、脂肪がたっぷりと詰まった豊満な乳房が、ブルンッと勢いよく飛び出す。
大きな谷間が消え、重力に逆らえず横に流れるように乳が垂れる。
「えっ?」
女傭兵は驚き、おのれの身体に生じた異変に初めて気付く。
彼女の眼がとらえたのは下腹部から首のしたまで続く一筋の赤い線。
「ひぃっ!!」
短い悲鳴をあげる小麦肌の女傭兵。
ブシュゥゥゥゥッ
女傭兵の身体の中央を走る切り口から血飛沫が地に、空にむけてほとばしる。
失血のためかどんどん、眼は虚ろになっていく。
「な、なんでぇっ。いやっ……」
信じられぬといった表情のまま、膝をついたかとおもうと、前のめりに、程よく肉のついたお尻を突き出すように崩れ落ちた。
目の前の光景が信じられないのか、残った二人の女傭兵は動けない。
その隙を見逃すカイリではなかった。
左にいた肩まであるボサついた茶髪の女傭兵の首を、その髪ごと斬り飛ばす。
「ヒィッ」惚けた表情のまま、ゴロゴロと転がる頭部。
遅れて、首から膨大な量の血が間欠泉のごとく不規則に湧き出てくる。
「さて、と。残るはおまえ一人だな」
ゆっくりと、カイリは呆気にとられたままの女傭兵へとふりむく。
彼は親友の仇である盗賊団を壊滅させた頃の、まだ幼さの残っていた彼ではない。
幾多の決死の冒険をくぐり抜け、著しい成長をとげていた。
変わらぬのは、罪なき者を苦しめる悪党を憎む心である。
「あ、ああっ……」
まだ幼さの残る顔におびえを浮かばせる女傭兵。
剣はなんとか構えているだけで、腰はひけている。
あまりの圧倒的なカイリの業にすでに戦意を喪失していた。
「おいおい、今の今までおまえらがやってきたことだろう。それが巡って自分の番になっただけ……武器も何も持たない村人をこれだけ殺ったんだ。報いは受けるべきだろう……なんだ、戦う覚悟もないのか」
ゆっくりとにじり寄るカイリ。女傭兵-ミリのひきしまった太ももを伝う黄金色の水。
力量の差は歴然。もし逃げて背中をみせようものなら一瞬にしてやられるだろう。
進むも退くも待つのは死。恐怖で彼女が失禁してしまうのも無理はない。
『セナイラ傭兵団』に入団してまだ日が浅く、今回のような一方的な殺戮のみで、
実際に殺し殺されるという「戦」を経験していないミリにとっては無理からぬことであった。
「なんだ、お漏らしか。……仕方ないな」
そう云うとカイリは構えていた剣を鞘におさめる。
「俺は剣を使わないでやる。これならおまえにも可能性があるんじゃないか、さぁっ!」
あからさまな挑発。しかし、ここまでされてはミリもひきさがるわけにはいかない。
「ふざけないでぇっ!」
そう叫ぶことでミリはおのれを奮い立たせ、カイリに襲いかかる。
振り下ろした剣はあっさりとかわされ、体勢を崩したミリの腹にカイリの重い拳がめり込んだ。
「ゴブゥッ」鍛え上げられた腹筋の上からもズドンッと響く一撃。
くの字に身体を歪ませ、持っていた剣を落とし、腹をかかえてしゃがみこむ。
「グヒィッ、ハヒィ、ハヒィ……」
呼吸も困難なのか必死で息を整えようとする。
「苦しいか。これが戦うってことだ。弱い人々を蹂躙するだけしか、してこなかったんだろう? しっかりとその身に痛みを刻んでからあの世に行け」
そういうと、皮のブーツで再び腹を蹴りこむ。
「アギィィィッ ヒィン……ヒィィィッ……許…し…て」
痛みと恐怖で涙をこぼし、紫色に変色した腹をさすりながら、なんとかミリは命を乞おうとする。
カイリは、いたぶるようなことは好きではない。
相手がどんな悪党であろうと、こういった行為には嫌な気持ちになる。
しかし、そうも言ってられなかった。
『セナイラ傭兵団』を殲滅させると心に決めたのだ。何よりも情報がいる。
「命が惜しいなら教えてくれ。まずおまえら傭兵団は総勢何人だ。」
「は、はひぃ。あ、あの私たちを…いれて…戦闘要員は……さ、二十八人です。」
完全に戦意を喪失したミリ。仁王立ちするカイリを見上げながら、腹の痛みをこらえ必死で答える。
「誰に、どんな依頼を受けてこんなことをしている」
誰に雇われたか。恨みを買いやすい任務ばかりの『セナイラ傭兵団』にとって、それを他者に話すことは最大のタブーとされたが、もはやミリにはそんな決まり事など、どうでもよくなっていた。
「あの、その交渉事は団長がされているので……あの黒い服を着た女の人です。えっと、り、理由はよくわからないんですけど、皆殺しにすることで悪……」
ビュンッ ブシュゥ
そこまでだった。風を切る音とともにどこからか放たれた矢がミリの腹を貫いたのだ。
「なん…で」まるでわからないとばかりに目を見開き、その理由を問うかのようにカイリをみる。
カイリは既にミリどころではなかった。剣を抜き、周囲を警戒する。予想通りカイリを狙って次々と矢が飛来した。
幸いにも一方向だったことで何とか長剣で切り払いながら走り、石造の家を盾に身を隠す。
残されたミリは身体中を矢に貫かれ絶命していた。
「やれやれ、これで三。あと二十五か。骨が折れるな」
そう一人つぶやくカイリ。近接戦闘だけなら自信もあったが、
弓という遠方からの射撃と組み合わさるとなんともまずい。
(さて、どうしたものかなと……)
カイリは呼吸を整えながら、この状況を打開するために考えを巡らせた。
                                    
                                                                 つづく




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【2009/06/04 20:12】 | #[ 編集]















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