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作者:クレイさん
投稿日時:2006/03/06(月) 01:40:27
備考:BL主催のパーティにダークキッドと新宮が乱入!


「本日はわたくしの主催するパーティにお集まりいただき本当にありがとうございます……」
歳は三十半ば、政界への進出を考えていると噂される青年実業家。
いやその言葉だけでは正確には伝わらないだろう。なにせ雲雀崎寧子は女なのだから。
左目下の泣きボクロが印象的な寧子は
青いドレスから露出した肌に少し老いを感じさせるものの、
それを補ってあまりあるほどの熟した女だけが持つフェロモンを全身から醸し出している。
寧子が政財界の著名な人物、またはその子女を集め、催されているのが今回のパーティである。
参加者はすべて男。そして接待をするのは女……そういった類のものだったからだ。
そう、少なくとも表向きは……
壇上の挨拶が終わり、寧子はステージを降りる。
この会場において素顔を晒しているのは寧子のみ、
他の男女はアイマスクをして正体を隠していた。
女たちの人数は二十名ほど、あぶれる男のないようにとの配慮か少し男の参加者よりも多い。
目元はアイマスクで覆われているため、実際の素顔はわからないが、
鼻や口そして全体の顔立ちから美女ぞろいだということがわかる。
髪や肌の色はさまざま、しかし誰もが流暢な日本語を話しており、
目の肥えた政財界の男たちも満足していた。
こういった場にふさわしく男も女も正装である。
寧子の隣にいて何やら話し込んでいる赤いドレスの女をのぞけば、
他の女はすべて黒いドレスを身にまとっている。
すべてがいやらしく胸元と背中が大きく開いたキワドイもので統一されていた。
「ウフフ、楽しんでらっしゃる?」
黒くまっすぐな髪を肩までたらした女が一人で口にワインを運んでいた男に話しかけた。
「……ああ」
いかにもつまらなそうに答える長身の男。
タキシードの上からでもわかる筋肉質な身体つきをしている。
「フフ、つれないお方。」
「あたしは舞奈というの……今宵のパートナーは貴方にしようかと思うのだけど、どうかしら」
いかにも源氏名といった趣の名だが、特に男は興味をそそられないようだ。
ただ、「パートナー」という言葉にだけ反応し舞奈に聞き返す。
「フフ、すぐにわかるわ。」
怪しげな笑みを浮かべはぐらかす舞奈。
男はまるで興味をなくしたかのようにテーブルに並ぶ豪華な食事に手をつける。
何かを観察しているように鋭く視線を動かしているのだが、
誰にとっての幸か不幸かはともかく、アイマスクのため誰もそのことには気付いていない。
なおも舞奈はその男を気に入ったのか、何か話題をみつけて話しかけている……
こういった組み合わせはまさに例外ともいうべきで、
ほとんどの男は美人の女にチヤホヤされ、デレデレと相好を崩し、
たわいもない、時には性的にきわどい会話に没頭していた。
三十分ほどの歓談のあと、再び寧子は壇上へと歩を進める。
「皆様、楽しんでいらっしゃると思いますが、ここで一つお願いがあります。
 ここにいる淑女たちが、ぜひ皆様と抱き合いたいというのです。
 大変、不躾ではありますが、どうかお聞き入れ願いたいと思います」
微笑を浮かべながら、そうマイクごしに話す寧子。
注意深くみれば、彼女の眼に何か凶々しいものを感じることもできたろうが、
酔いもまわり、なにせ美女とのハグの機会である。誰も断ろうはずもない。
「ハハッいいでしょう」
そんな声がいくつかあがったかと思うと皆、二、三言近くの女性と言葉を交わしたあと、
数十分の会話ですっかり打ち解けた女と抱きしめあう。
「さぁ。わたしたちも」
そういって男を迎えるため両手を広げる舞奈。
男は少しの逡巡のあとやれやれといった顔のまま、舞奈を抱きしめる。
甘ったるい香水の匂い、柔らかい女の感触。男の厚い胸板につぶされる豊かな乳。
今この会場にいる男たちは誰もがその感触を味わっているのだろう。
「いいわ。すごくたくましい身体。フフ、抱きしめがいがあるわ。」
そうつぶやく舞奈。抱きしめがいという言葉が強調されていたことに男は気付く。
そして、ため息をつきながら小さく首をふる。
「皆様、そのままお互いに抱きしめあったままお聞きください。 まずは淑女たちのお願いをお聞いくださったことを感謝したいと思います。そして……」
そこで寧子は一息つく。何か覚悟を決めたように、
何かこれから起こることへの期待に胸ふくらませるかのように。
「わたくし、重大な発表がございますの。わたくし、いや女の願いでございましょう。ずっと若くありたい。その想いは年をとるにつれ強くなってまいりました。もうその気持ちが抑えきれないとき、ある組織からのオファーがありましたの。熟考のすえ、わたくしは契約を交わしました。このパーティはその祝賀会なのです。」

   『何をいっているのか』 

男たちの脳裏にクエッションマークが浮かぶ。
なかなか次の言葉を発しない寧子のせいで興が覚めたのか、
女を抱くことをやめ、離れようとする男も数人いた。
しかし、女たちは男を抱きしめる腕をはなそうとはしなかった。
「君、離しなさい。聞こえないのかね。離せといっとるんだ。」
男の恫喝も意に介さず女はまわした腕を解こうとはしない。
寧子はその異変を当然のように受け止め、なおも続けた。
「そう、永遠の美貌には代償はつきもの。
 それは……大変残念なことに今回参加いただいた皆様、つまり男たちの血ですの。
 今回のパーティはわたくしが新生するための契約の場でもあります。さぁ、ブラックレディースの皆様。場はととのいました。存分に抱きしめてあげなさい。」
その言葉が合図だった。
女たちは男たちを抱きしめる。まさに死ぬほど。
細腕とは思えぬ強力な力で男たちの骨が砕かれ、内臓がつぶされていく。
「がっ」「ぐぎぃぃっ」「やめっ」「ぐひゃっ」
男たちは何の抵抗もできずに息絶えていった。
女たちは殺人の興奮からか皆恍惚の表情を浮かべている。
なかにはあまりの高ぶりに少しイってしまったものもいた。
しかし、一組だけ例外があった。
「ああ、さっきまでつれなくして悲しかったわ……でも、いいなりにならない男ってのもすごく興奮しちゃう。そんな男を抱き殺せるなんて……もう……最高っ!」
そんな戯言を男につぶやきながら抱きしめる舞奈の表情がどんどん硬くなる。
改造された腕をもってしても少しも骨がひしゃげる感覚が伝わってこないのだ。
そして、男も苦悶の表情どころか、平然とした顔を崩していない。
「ど、どうして」
「そりゃあ、俺も改造されているからさ。」
「えっ」
その言葉と同時に、今度は舞奈が強く抱きしめられた。
強化骨格が軋み、内臓が悲鳴をあげる。
「いやっ、やめっくひぃぃぃぃぃぃ」
身体が圧迫され、顔は赤黒く変色していく。
舞奈は最後の力をふりしぼり、男のアイマスクを奪い取る。
そこには……死神の顔があった。
「ダー……ク……キッド……ガハァッ」
血反吐を吐き事切れる舞奈。
腕を解くダークキッドと呼ばれた男。
信じられないという顔のまま身体中を粉々にされた舞奈はその場に崩れ落ちる。
自分をずっと嫌らしい目つきでみてきた豚のような男たちが殺されていく様を
壇上から眺めていた寧子は予想外の出来事に焦りの表情を浮かべた。
「な、なんなのよ。こんなの聞いてないわ。ねぇどういうことなの!」
リーダー格なのだろう、赤いドレスを身にまとう女の方にむかって寧子は叫ぶ。
初老の男を抱き殺した女は憎憎しげに舞奈を倒した男を睨みつけながら答える。
「そいつはダークキッド。我がブラックレディースの天敵よ。
 いつもいつも性懲りもなくどこにでもあらわれおって……
 おおかた、本来の参加者と入れ代わったのだろうが……
 しかし、飛んで火にいる夏の虫とはこのこと。」
指を鳴らす赤いドレスの女。それがサインだったのだろう。
二十ほどの黒いドレスが宙に舞う。
黒いドレスの下からは胸元が大きくVの字に開いたボディスーツ。
さきほどまで興奮状態にあったためか数人の女の乳首がスーツごしに浮いている。
いわずとしれたブラックレディースの下級戦闘員である。
彼女たちの手には内太股に忍ばせていた小銃があった。
硬質のプラスティックでできた著名な銃をBLが独自に改造し威力と精度を高めたものである。
すべての銃口がダークキッドの方を向いていた。
「さぁ、これで貴様も最後だ。
 いくら折島博士の遺作といえど、この数で狙われたらひとたまりもあるまい。」
勝ち誇る。赤いドレスの女。
ダークキッドは彼女が司令塔。上級戦闘員といったところかと冷静に判断していた。
寧子は事の推移についていけず、壇上でオロオロとしている。
「そいつは…どうかな。」
挑発するようなダークキッドの言葉に赤いドレスの女は激昂する。
「構わんやってしまえ」
銃声が響き渡る前に、会場が闇に包まれた。
偶然、いやそうではない明らかに人為的に照明が落とされたのだ。
そのことを予測していたかのように、先に動いたのはダークキッドだった。
タキシードが破け、両腕の外側から硬質で鋭利な刃が飛び出す。
そして一目散に混乱している下級戦闘員のもとにひた走る。
眼も強化されある程度の暗視能力は下級戦闘員も備えているものの、
所詮は量産用のものであり、常視と暗視との切り替えには時間がかかる。
ダークキッドの母、折島博士が粋を集めて改造したダークキッドの眼は一瞬にして、その切り替えが可能であり、行動に差がでるのは歴然とした結果である。
またこのアクシデントがダークキッドがひきおこした故意によるものだとすれば、
彼の行動になんの疑問も生じない。
ブラックレディースの戦闘員にとってまさにその場は地獄と化した。
闇からの刃が女たちの柔肌を切り裂いていく。
顔が胸が腕が腹が尻が足が、一切の躊躇なく斬られ血飛沫をあげる。
「ハゥン」「ヒギィィィッ」「キャァァ」「ヒィンッ」
下級戦闘員の悲鳴が会場にこだまする。
彼女たちの持っていた銃とて暗闇のなかでは当たるものではない。
むしろ仲間を撃ってしまう可能性の方が高い。
しかし、恐慌状態に陥った下級戦闘員は、赤いドレスの女の落ち着いて固まれという指示も聞かず、
やたらめっぽうにセミオートの銃を乱射する。
「なんでぇ」「わたしだよぉ」「撃たないでぇ」
もちろん犠牲になったのは同じ下級戦闘員。
口径もそんなに大きくないため致命傷にはならなかったが、
命中箇所によっては戦闘不能にするには十分な威力である。

***

あまりに一方的な戦場を抜け出し電気室へと全速力で走る下級戦闘員。
豊かな乳房とお尻が縦に横にと揺れる。
照明さえもどれば多対一、いくら戦闘力に差があるとはいえこちらには銃がある。
勝敗を決するのは時間。しかし、もし、あの停電が人為的なものであるならば、
この電気室にダークキッドの仲間がいてもおかしくない。
(1・2・3)
心の中で数をかぞえたあと、扉を思いきり開き部屋のなかにむかって女は銃を構えた。
そこには誰も……いなかった。
「なかだけを警戒しすぎだよ。隣の部屋やむかいの部屋にいるってことも考えなきゃね」
そう、背後から男の声がしたかと思うと、すぐさま首根っこを掴まれる。
しかし、下級戦闘員も負けてはいない。
この下級戦闘員は上級戦闘員への昇格も期待されるエリートであった。
右足のかかとで男の足を思い切り踏みつける。
「くっ」
ひるんだ隙にくるっと振り返り、細身の男に体当たり。
「がはぁっ」
ふっとばされた男を尻目に慌てて、電気室に案の定落ちていたブレーカーを引き上げる。
照明がもどった。これでダークキッドの思いどおりにはならないだろう……
この功績は大きい、下級戦闘員-ジェンナはほくそ笑む。
上級戦闘員を飛び越して幹部という道もありうる。彼女の妄想は膨らむばかりである。
まずはとどめをと、ジェンナはふっとばしたさっきの男にかけよる。
男の横にはさっき外れたのだろう、丸縁の眼鏡が転がっていた。
もし、この時ジェンナが男の正体を知っていれば結末は変わっていただろう。
しかし、ジェンナは知らなかった。そして大役を果たしたという安堵と、彼女が生来持つ嗜虐の心が運命を決めた。
金髪を揺らし、男に近づくと股間を苦痛に歪めた顔を押しつぶすようにのせる。
「ウプゥッ」
「フフ、息ができないでしょう。いつもなら窒息させちゃうんだけど
 今日は時間がないからわたしの自慢の太股で絞め殺してあ・げ・る」
彼女が太股に力を入れようとした、その時男の両手が彼女の柔らかく大きなお尻に触れた。
「ふりほどこうとしているのかしら、
 それとも、最期くらい大好きなお尻をさわりながら死にたいってこと?」
余裕のジェンナがあらためて力を入れようとした時、
おのれの身体がまるで金縛りにあったように動かなくなっていることに気付く。
丸縁の眼鏡の男-新宮 零二の能力『あやつり人形』が発動したのである。
「な、なにをしたの?」
気が動転し、男に問いかける。もちろん窒息状態にある零二が答えられるはずもなく、
その答えは彼女自身の身体が示すことになる。
ジェンナの小銃を持っている腕が、彼女の意に反して動き、
白く大きな胸の谷間に小銃が挟みこまれる。
「な、なに、え、どうなっているのよぉぉぉっ」
男が何か細工をして自身が操られていることはわかった。しかし、止める術がわからない。
「ね、ねぇやめて、とめてぇぇっ」
泣き声のジェンナ。恐怖で涙があふれてくる。
トリガーセーフティが押し込まれ、あとは引き金を引くだけの状態になる。
「やめて、とめて、やめて、とめて、やめて、とめてぇぇっっハァァァァァァン」
パンッ、パンッ
渇いた銃声が二回響く。自ら撃った銃弾は心臓を貫き、ジェンナは仰向けに倒れる。
慌ててジェンナを押しのける零二。ハァハァハァッっと窒息寸前だった零二は肩で息をする。
おのれの意識がなくなるか、ジェンナが倒れるかのかなりきわどい戦いだったのだ。
「ふぅぅぅぅっ。やれやれ、これでお漏らしまでされたら大変だったな」
一人つぶやく零二。一応、元警察官であるが、
純粋な戦闘ともなれば、戦闘用に改造された下級戦闘員にもおくれをとるため、
復讐を胸に誓ったものの、最近はダークキッドの裏方に徹していた。
今回も、ダークキッドと無線で連絡をとりながらの作戦遂行であった。
手で触れたものを操ることができるという能力があっても、
触れてから操るまでにタイムラグが何秒かあるため、今回のようにすぐさま反応されては発動前に
やられてしまうのである。まさに偶然が重ならなければ、今地に臥しているのは零二であったろう。
「さてさて、ダークキッドの旦那はうまくやってるかねぇ」

***

照明がもどったとき、既に下級戦闘員の三分の二、十三名がすでに戦闘不能になっていた。
まだ息のある者もいたが、致命傷であり長くはない。
今この会場で動ける者は赤いドレスの女、銃を構えた下級戦闘員六名、
そして壇上で大股をひらき、腰を抜かしている寧子、そしてダークキッドである。
「わずか一分で十三人だと……ありえん」
その惨状に驚く赤いドレスの女、上級戦闘員であるカリーネである。
ラテン系の黒髪の女。彫りの深い顔立ち。モデルのような八頭身の体型。
赤いドレスもみればフラメンコ用の衣装にもみえる。
「しかし、こちらはまだ七人いる。死ね、ダークキッド」
カリーネの号令の下、ダークキッドにむけ、七つの銃弾が牙をむく。
横っ飛びにかわし、そして、そして今日の参加者のうち一番太っていた男を盾にした。
小銃のため、脂肪のたっぷりとつまった身体を貫通するほどの殺傷力は持たない。
いや、仮に貫通したとしても既に威力が殺されており、
改造されたダークキッドの肉体を致命的に傷つけることはない。
非道な行為と罵るものいるかもしれない。
しかし、命を賭けた戦いにおいてダークキッドのとった行動は責められるのか。
少なくともダークキッドはそのような謗りなど毛ほども何も思わないだろう。
彼はただひたすらに『復讐鬼』なのである。
男の身体を抱えたまま戦闘員にむかって突き進む。
彼我の差1m。ここまで来ればダークキッドの独壇場である。
彼が刃へと変化させられる身体部位は四つ。両腕両足の外側である。
両腕だけでなく、両足も鋭利な刃に変化させ、太った男の死体を相手にむかって投げると同時に、
回し蹴りの要領で下級戦闘員一人の上半身を斜めに薙ぐ。
勢いそのままに今度は軸足も浮かせ蹴りこむ。もう一人、今度は頭部がきれいにスライスされる。
あまりの早業に動揺している一人の下級戦闘員の胸の谷間に右腕を突き刺す。
引き抜くと同時に両腕をのばし一回転、二人の下級戦闘員の首がすとんと落ちる。
一息の間に五人。圧倒的な強さである。
カリーネはかなわないとみたかその間に後方に飛びのいていた。
残されたの下級戦闘員ただ一人。
「あ、ああっ助けっ……」必死でこらえる下級戦闘員。
前には復讐鬼、背後には生殺与奪について絶対の権利を持つ上級戦闘員。
ブラックレディースお得意の命乞いもできないのである。
小柄な二十前後の女は身体を震わせながら、
いっこうに攻撃してこないダークキッドに銃口をむける。
クリクリとした大きな眼いっぱいに涙を浮かべている
「よーく狙え、外せば地獄行きだ」
さっき抱き殺した男の顔が下級戦闘員-レイナの脳裏に浮かぶ。
父の名代として参加していた三十過ぎの容姿端麗な男だった。
ああいった場は苦手だったのか、少しおどおどしていたが、
真剣に「本当に抱きしめてしまっていいの」と聞くので、
少し年上ながら可愛いと思ってしまった。
そんな男をペットにしたいなぁなんて考えて、
ものすごく興奮しながら殺した。ちょっと濡れるくらい気持ちよかった。
けど、終わった後に少し後悔した。ああ、これはその報いなのだ。
あの世に行ったら謝ろう。まあ行き先は違うかもしれないけど……
そう軽く夢想してレイナは少し落ち着いた。
震えはとまる。
「死んじゃえっ」
黒い言葉をかわいい声にのせてレイナはダークキッドの頭部めがけて銃を撃つ。
首をひねるだけでかわすダークキッド。
そして、意外な行動にでた。
彼女を抱き寄せると唇を奪ったのだ。
「んんっ」
舌をからめるディープなキス。
呆気にとられるカリーネと寧子。
そして、接吻が終わったあと眠るように事切れるレイナ。
猛毒であるダークキッドの唾液を摂取したのである。
しかし、刃で切り裂かれるよりははるかに楽な死を与えた事への疑問は残る。
レイナの表情に何かをみたのか……真相はダークキッドだけが知る……
「ま、なにはともあれ、わたしだけということだな……しかし、わたしはそう簡単にはやられんぞ」
肩を抜いた赤いドレスがスルッと地に落ちる。
あらわれたのは一糸まとわぬ、カリーネのすらっとした細身の身体。
並の男ならいやらしさよりもその美しさに目を奪われていたことだろう。
もちろん、ダークキッドはそんな感情をまして憎きBLに対して抱くはずもなく、
ただ、彼女の次の行動を警戒している。
「我が死の舞踏、存分に味わうがいい」
カリーネは軽快にステップを踏む。それはまさにフラメンコ。
本来ならサパトスと呼ばれるフラメンコ用の靴を履き、
はじめて鳴らすことのできるコツコツ、コツコツという軽妙な床を叩きつける音が会場に響き渡る。
そして何も持っていないはずの手を打ち鳴らせば、パリージョと呼ばれるカスタネットの音がでる。
小ぶりな乳を上下に揺らす全裸のフラメンコというどちらかといえばシュールな光景である。
もちろん、そんな彼女の踊りをボゥッとダークキッドが鑑賞しているわけではない。
音にしても改造した身体の中に内蔵しているのだとすれば不思議でもない。
そう結論づけ、腕の刃をカリーネめがけて何度も振るうのだが何故かスルリとかわされるのだ。
その間、カリーネの身体がどんどんと薄れていき、むこうの壁が透けてみえる。
そしてついに一撃も加えることなく、カリーネの姿がみえなくなった。
その現象をみて『透明化』が上級戦闘員たるカリーネに
与えられた能力なのだろうとダークキッドは推測する。
ならばと、下級戦闘員から流れ出た血で、池と化した血だまりのなかに身を移した。
こうすれば近づけば血が跳ね、上級戦闘員の位置がわかるとの判断からである。
しかし、響き渡るコツコツ、カッカッという音はするものの、
いっこうに地面の血に足跡がつくなどということはない。
「ガハァッ」
鋭い鈍器で殴られたような衝撃が背後からダークキッドを襲う。
すぐに刃のついた腕をふるうが、むなしく空を切るのみ。
今度は前から腹にむかって一撃がくる。
「グホォッ」
蹴りこむがまたも何の感触もなし。
ただ、コツコツカッカッという音だけがただ耳に残る。
なぶられるように身体中を衝撃が襲う。反撃すれども相手には何のダメージも与えられない。
万事休すかとダークキッドが覚悟を決めた時、
バンッ銃声が会場に轟いた。ジェンナから奪った小銃を零二が撃ったのだ。
あたりこそしなかったがその音がダークキッドを救った。
ダークキッドはただの一歩たりともカリーネが『死の舞踏』をはじめた時から動いていなかった。
つまりは、『死の舞踏』とはダークキッドが考えたように『透明化』などといったものではなく、
『催眠術』であった。カリーネが裸体を晒したのも、ダークキッドを術中にはめるブラフにすぎない。
手と足に内蔵されたフラメンコに似た音が催眠を誘発させ、
対象を無抵抗にさせるというのがカリーネの能力であり策であった。
音に依存しているが故に、会場にいなかった零二には効かず、
そして彼の発砲音が催眠の音を乱し術が解けたのである。
「しまった、仲間がいたか」
ダンスをやめ、そう叫ぶカリーネ。術を破られればもろいもの。
それが彼女の最期の言葉となった。
ダークキッドは右腕を刃から全高八〇cmの刀と呼ばれるような鋭利なモノへと変化させ、
カリーネにむかって突進。
カスタネットの役目を果たし、さっきまでダークキッドにダメージを与えていた
特殊合金を内蔵している掌でカリーネは受けようとするが、
ダークキッドのスピードの乗った一撃をその小さな掌だけで受けることなどできない。

刃が鈍い煌きを放ち、カリーネの身体に斬りつけられる。
一瞬の後、カリーネの美しい裸体に不似合いな頭から股間までに赤い筋が走り、
そして彼女の身体は左右真っ二つに切断された。
ものすごい量の血飛沫があとからあとから噴き出ていく。
カリーネが倒れ、ついに寧子の味方はいなくなった。
さきほどまでの戦いでダメージを受けながらも、ゆっくりとした足取りで近づくダークキッド。
「ひっ、ひぃぃ」事業に成功したキャリアウーマンというイメージをかなぐり捨て、
寧子は無様な醜態を晒している。
「どうだ、悪魔に魂を売った感想は。老いない美しい身体は手に入れたかい」
静かに、まるで諭すかのようにダークキッドは寧子に問いかける。
しかしその問いの後半は聞かずともわかっていた「まだ」だったからだ。
今回の契約が遂行され、はじめて改造手術を受ける予定であった寧子の身体は、
未だ三十半ばの若さを失った身体だけだ。
いや、もし同年代の女がみればうらやむような肌を持っていたが、
寧子自身にとっては忌々しい老いを刻んだ姿態だった。
「な、なにが悪いのよ。ずっと美しくありたいなんて女なら誰もが思っていることじゃない。」
ヒステリックに叫ぶ寧子。呆れたようにダークキッドはいう。
「悪いことじゃないさ。それを否定するつもりもない。
 しかしな、多くの犠牲のもとにってのは違うんじゃないのか」
「あ、あんな金と女しか興味のない腐った豚共を殺して何が悪いのよ。
 そうよ世界は女が支配すべきなの、男は死ぬか奴隷、ハハ、それでいいじゃない」
あきらめたのか、命乞いもせずに心のままをぶちまける哀れな女に、
ダークキッドは少し憐れに思う。
まだ、改造されていないただの人間であるということも彼女への殺意を奪っていた。
パンッ
戦闘員から奪い取った銃を寧子にむかって撃つ。銃弾が彼女の頭の横をかすめ壁にめりこむ。
「ハヒィッ」
チョロチョロと黄色い液体が青いドレスを濡らしていく。
「命まで奪わん。好きにするがいい。
 だがもし次、ブラックレディースとしてあらわれたときはいっさいの容赦はしない」
そういうとダークキッドは血でむせかえる会場を振り返りもせずに入口で待っていた
零ニとともにその場を後にした。
「はひひひひひひぃっ、助かった。ダークキッドォォォわたくしをコケにしてぇぇっ
 けど、顔は覚えたわ。フフ、雲雀崎寧子を舐めないことね。社会的に抹殺してあげる」
暗い野望を胸に秘め、復讐に燃える寧子。そう、生き延びたそのことで寧子は勝ったと確信した。
契約は遂行したのだ。これで永遠の若さが手に入ると心の中でほくそ笑む。
「なぁに、この惨状は」
人を逆なでするような声とともに会場の入り口にあらわれた一つのシルエット。
血も死体もまるでみえないかのようにズンズンとまっすぐに寧子のもとへと歩いてくる。
黒皮のベルトのようなもので胸と股間だけを隠した女であった。
といっても胸部は乳首だけが隠れているようなもので胸のほとんどの部分が露出している。
股間部も同じようにお尻はむきだしで『女』の部分だけが黒皮で隠れているだけだ。
惜しげもなくあらわにした全身のプロポーションは、男がすぐに股間を握りしめてしまうほどに
いやらしい身体つきをしている。柔らかそうな歩くごとに揺れ動き形を変える爆乳、
くびれた腰、そして形のよい大きなヒップ。そして寧子が何よりも嫉妬したのは若さである。
ほとんどが露出した身体から誰もがうらやむ十代の肌の張りや艶がみてとれるのだ。
「さぁて、みわたすところあなたが唯一の生存者みたいだけど……
 そうさっき書類でみたわね、ええと確か雲雀崎寧子」
どこか猫を思わせるかわいらしい顔つきの女が寧子の名前を呼び捨てにする。
「は、はいそうです。あなたは」
「ぼくぅ、ぼくはねぇケイト。ブラックレディースの幹部ってところかな
 えっと、自己紹介も終わったところでなんでこんなことになってんのか教えてちょうだい」
若者言葉というのだろうか。寧子は彼女の口調にかなり苛立ったが、
幹部という立場は絶対である。事の顛末を細かに伝えた。
もちろん、寧子自身が契約を遵守したこと、
人間である自分にはダークキッド相手にはどうしようもなかったことは強調して。
「また、ダークキッドか。なんていやなやつっ。こんどはあたしがこらしめてやらなきゃ」
プンプンッと怒るケイト、女子高生がいたずら好きの男子に怒っているようにしかみえない。
しかし、寧子もそんな感想を持ったが、なりはともあれ幹部である。もちろん口には出さない。
「あの、それで、ブラックレディースへの入会の件は……」
おそるおそるケイトに聞く寧子。
「うんっ。そうだね、契約もしっかりと守ったようだし入会を認めたげる」
喜色満面の笑みを浮かべる寧子。
紆余曲折あったがこれで「永遠の若さ」が手に入るとなれば安いものだ。
「じゃあ最初の指令ね」ケイトはニヤニヤしながらそう告げる。
まるでいたずらを思いついたかのように。
「は、はいっ」
直立しながら指令を待つ寧子。
「うーん、ぼくの実験台になって」
「は?」
「だから、実験台になってっていってるのお・ば・さ・ん。
 あんたの財産はすべてBLがもらった。もう用済みなんだよねおばさん
 だから最初で最後の指令はぼくの実験台になること。すごいよ幹部じきじきなんだから」
すべてを犠牲にしたのに裏切られた。
寧子はこれほどまで人は怒ることができるのかと思うほど頭にきた。
何よりもこんな小娘におばさんよばわりされたことが一番……
「キィィィッ」
金切り声をあげて、ケイトの絞め殺そうと首に手をかけようとする。
その時、全身に痛みが走ったかと思うと身体がまったく動けなくなる。
そして青いドレスがバラバラになり熟れた裸体が晒される。
「ハハ、努力はしてるみたいだけどやっぱりおばさんの身体だね。
 お腹あたりが少したるんでるんじゃない」
「え、なに。いやぁみないでぇ」
若い女に老いた裸体をみられる。これほどまで、寧子にとって恥ずかしいことはなかった。
「ふん、みたくもないよ。サヨナラお・ば・さ・ん」
「やめっ、ゲブッ」
ケイトの声と同時に寧子の身体に線が幾重にも走り、
そして二十以上のパーツに分断されボタッボタッとその場に肉のピラミッドをつくる。
「お役目ご苦労さま、なかなかいい実験台だったよ。ダークキッドに試すのが今から楽しみだ」
茶化したようにいい、肉と化した寧子を一瞥するとケイトもその場をあとにした。

                                                        つづく


















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