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作者:二代目スレ70氏
投稿日時:2006/08/10(木) 03:40:59
備考:やられなし。


 連れていかれた警察署は、某ゾンビゲー二作目に出てくる署そこのけの混乱振りだった。受付のお姉さん警官はずっと笑顔で歌いながらネギ振り回してるし、いい歳をした刑事二人が「さいたまさいたまー!」とか叫びながら走り回っている。異常事態に対処しきれず皆がおかしくなっているようだ。
 そして俺はというと、なんとかトイレでパクったタオル一丁を腰に巻き、取調室に座らされて小さくなっていた。
 目の前には警官らしからぬアロハシャツの眼鏡デブが一人。こいつは絶対に現場職じゃない。人手が足りないのだろう。
「それで? レバニラ作ってもらってからどうしたの」
「だからさっきも説明した通り、テレビのニュースを見て逃げようとしてですね……」
 答えながら、しきりとペンを走らせるデブの手元をそっと覗いてみた。調書に変なことを書かれたらたまったもんじゃない。
 どれどれ……?
 ――女淫兵が『悪の軍隊参上』と言ったので、被害者は『俺の晩飯返せ』と言ったら、女淫兵はレバニラを作ってやって、そして被害者はテレビを見たので、二人でセックルをした――
「幼稚園児の日記以下だな、あんたの文章」
 いい加減頭にきた俺が思わず突っ込むと、デブは苦虫を噛み潰したような顔で睨みつけてきた。
「なんだよぅ! こんな書類なんか、意味が通じればそれでいいんだ。おれはプロ作家じゃないぞ、文章なんか書けるか」
「いや通じてねえし。まったく意味不明だし。作家じゃないとか以前の問題だし」
 俺達はしばらく憮然とした顔でにらみ合っていたが、俺はふと気になって訊いてみた。
「ところで、俺が殺しちゃったのに……ていうか向こうが死んだのに俺が〃被害者〃なの?」
「当たり前だろ! あいつらは殺したほうがいいんだ。むしろその方が褒められるんだって」
「ひでぇな、警察が殺しを勧めるのか」
 正直、『殺したほうがいい』という言い草にはカチンときた。あんな可愛い彼女達を害虫みたいに言いやがって。
 納得できずに怒っている俺の前に、デブは取り出してきたファイルを置いて顎でしゃくった。見ろという意味らしい。不承不承ページをめくると、即身仏っぽいものの写真がいっぱい貼ってある。
「何このエジプトミイラ写真集」
「バッカおめー、そりゃ女淫兵に負けた連中の成れの果てだよ!」
「ハァ!?」
 慌ててもう一度よく見てみると、確かにミイラは現代の洋服を着ている。誰もが苦しげな顔で息絶え、両腕を上に突き出していた。
「女淫兵はな、もし男が自分より先に絶頂に達したら、チンコから男の体液を吸い取っちまうのよ」
「そんな無茶な!」
「だろ? だから言ってるんだよ、殺したほうがいいって」
 そう言われても、にわかには信じられなかった。あんなに綺麗で優しい彼女達が……
 その時、取調室のドアがノックされ、スーツを着込んだお偉いさんらしい人が真面目くさった顔で入ってきた。
「あっ、室井管理官!」
 デブが慌てて立ち上がろうとして、机に出っ腹ぶつけて悶絶した。俺はゲラゲラ笑ったが、室井とかいうのはニコリともしない。
「ロビーまで来てテレビを見てみろ」
 それだけ言うと、ぷいと出て行ってしまった。俺はまだ痛がるデブに肩を貸してその後に続く。ロビーにはまともな警官と若干まともでない警官が集まり、ツルッパゲの老人がひたすら喋るテレビ放送に見入っている。
 画面に映っているのは本来なら〃笑っていいとも〃のスタジオの筈だが、フジテレビが占拠されたらしい。ピンクで派手なスタジオの後方には女淫兵がずらりと〃休め〃の体勢で整列し、手前に某作家よろしく軍服姿の老人。
『……であるから、我が手先、女淫兵にセックスバトルで勝てなかったものは死ぬべきだ。また彼等はただ死んで終わるものではない。唯一邪神、クトゥルフ股介(またすけ)が狂気の渦に投げ込む者たちだ。理由は性的に軟弱なる男は死ぬべきだからだ。今の日の本が腐っておる原因の一つ、それは性的に弱く、生物学的に劣った男どもが跋扈しているからに他ならない!』
「ああ、だからセックスバトルなのか……」
 やっと納得した。それにしても、セックスが弱いのは人間として劣っている証拠なのか? それならAV男優は偉いのか。俺の頭の上に飛び交う「?」マークを無視したまま、テレビ放送はまだ続く。
『日本、アジア、しいては世界を正し、かつ守ることができるのは、唯一邪神であるこのクトゥルフ股介しかいない! 従って、その第一段階として日本国首相の座にクトゥルフ股介がつくのを良しとせぬ者は悪人であり、クトゥルフ股介が狂気の渦の中に投げ込む者だっ!』
「このフレーズ、さっきも使いませんでしたっけ。アホだなこのオジン」
 俺は横で固い表情をしているスーツのお偉いさんに話しかけたが、「静かに」と怒られただけだった。

***

 やっと余っている警官の制服を恵んでもらった俺は、なぜかデブと一緒に大会議室に連れてこられた。
「えー、首謀者は自称・生物学博士で自称・コンピューター工学博士で自称・天才革命家の〃米田股介〃七六歳無職」
「自称ばっかりじゃんよ。終わってるな」
 また俺が突っ込みを入れると、会議室に山ほど詰め掛けた刑事の中から苦笑と失笑が漏れ、説明している刑事からは睨まれた。
「犯人は〃女淫兵〃なる無線型生体ロボットを使って永田町を初めとした都心部を襲撃し……」
「あれってやっぱロボットだったのか?」俺は横のデブに小声で聞いてみた。
「そう……とも言えないな。簡単に言うと、殺人ダッチワイフラジコンってとこかな」
「ラジコン?」誰かが動かしていた、という意味だろうか。
「つまりその……例えばお前が倒した女淫兵、あれは一人の個体だと思ってるだろ」
「うん」
「ところが違うんだな。お前さ、携帯用ソフトとかで見たことないか? 画像に向かって言葉を入力すっと返事してくれるやつ」
 そういえば覚えがある。あらかじめ登録された辞書の中から、こちらが入力した言葉に対応した反応を返す自動応答式ロボットだ。
「……つまり?」
「つまり、あいつらは個体ごとに思考して動いてるわけじゃない。そんな能力もないし、もちろん個別の人格もない。あいつらを動かしているのはどっかに設置された、たった一つの巨大なマザーコンピューターで、それを破壊しない限り何人倒そうが無駄ってことさ」
 俺も技術職の端くれだから、デブの話はよく理解できた。納得できるかどうかは別としてだが。
「なるほど、無線で動くラジコンだとして……素材は何を使ってるんだ?」
「粘菌の一種を特殊加工したものらしい。人間の筋肉と同じように、微弱な電気信号で動くんだ。だからバッテリーも小さくてすむし……あ」
「うん? あ……」
 気がついてみれば、俺達の声は会議室中に響き渡っていた。刑事達が皆こっちを向き、しきりと頷いたり「へぇー」等と言っている。
 プレゼン用スクリーンの前にいた刑事が、ものすごい顔で俺達を睨みながら吐き捨てた。
「ご丁寧に説明してくれてどうもありがとう。もう俺が解説することは何にもないよ!」

***

 その後俺が連れてこられたのは、署の地下奥にある武器庫だった。
「ちょっとこれを着けてみてくれ」
 そう言われて渡された仮面ライダーの変身ベルトのようなものは……まんま変身ベルトだった。スイッチを入れると、ベルトから這い出た光がたちまち俺の手足を埋め尽くして覆い、強化スーツになってゆく。
「うわ、すげえ! これはどういう仕組みなんだ?」
 ベルトから出てきた虫っぽい顔のヘルメットだけ脱いで訊くと、デブはこともなげに説明する。
「これ本当は自衛隊用に開発された量子格納式防弾・強化ロボットスーツなんだけど、警察は使えないんだよね」
「警察が使えないものを、一般人の俺が使っていいのかな」
 試しに足踏みしてみると俺の脚は信じられない速度で動き、パンチを繰り出してみると自分で自分の拳が見えない。
「仕方ないさ。法整備がまだ完全じゃなくて〃とりあえず警察はダメ〃って事しか決まってない。だから今朝から、あんたみたいに女淫兵に打ち勝てたスケベ男を捜しては連れてきてたんだよ。捜査協力費もかなり出るから、いいだろ?」
「なるほどねえ……っていうかスケベ言うな。これで女淫兵をバッタバッタとなぎ倒せばいいんだな?」
 すっかりライダー気取りになった俺がジャブを繰り出していると、デブは微妙な笑い方をしながら言った。
「あーそれなんだが……格闘で倒すはやめたほうがいい」
「は?」
「そのスーツはマグナム弾も防ぐし、十トンの衝撃にまで耐えるけど……女淫兵のキックは、分析だと最大威力が十一トンなんだ」
 じっとりした目で睨む俺の視線に臆したか、デブは慌てて補足した。
「いやっ、でもな、そのスーツ専用のいい武器があるんだよ。俺がふざけて作ったんだけど、こんな時にはぴったりだ」
 ロッカーからバックパックを出してきて、俺の背中に装着した。
「ほら、オプションの〃ハイドラ触手〃だ! スーツと同じ脊椎神経スキャンで思うままに動くからな。ちょっと動かしてみろ」
 そう言われても、具体的にはどうしたらいいのかさっぱり判らない。「えーと……」
「なんかこう、エッチなことを考えるんだよ!」
 とりあえず俺は、アドバンサー・ティナを思い出してみた。あの場面を想像すると、微妙な興奮に反応して触手がニュルリと動き出す。
「お、動い……あぎゃーっ、なんじゃこりゃーっ!」
 途端に肛門を何かに貫かれ、俺はケツをおさえて絶叫し、前のめりに倒れた。
「ああ、触手の受ける感触は電気信号に変えられて、スーツ内の前立腺に差し込まれた棒から快感がフィードバックされるからな」
「なんでだよ、別にただの触手バイブでいいだろうがよっ!」
 涙目で抗議する俺の顔を、デブは近寄ってきて不思議そうに覗き込む。
「なんで? なんで? 快感は、あったほうがいいと思うけどなあ……あったほうがいいよぉ」
 眼鏡の奥で目をパチクリさせる奴の顔を見て、俺はもう一切の文句を諦めた。
「うん、じゃあ逝こうか……」
「おう、おれも技術サポートとして一緒に行くからな」
 あっけからんと言い放つデブを、俺は今度こそ理解不能の目で見つめた。
「ハァ?」
「そのスーツは試作品なんだよ。お前が死ぬのはどうでもいいが、スーツが壊れたら大変だ」
 笑顔からして悪気がないのは判っているが、どうにもこうにもムカつく男だ。今日は厄日か?
「一応、名刺渡しとくわ。おれ、こういうもんだから」
 得意げに渡された名刺には『警視庁サイバー課 二羽 比沙男』と書いてあった。
「ふぅん、あんた『ふたば☆ピザお』って言うのか」
「なっ……」ピザ男は一瞬絶句したあと、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「おおおれは『にわ ひさお』だよっ! 誰が双葉のピザだ、誰が! ぶるわあぁぁああああぁぁ!!」
「だってピザじゃん」
 知らない人のために説明すると、最近はデブのことをピザと呼ぶのだ。ピザばっかり食ってそうなのが由来らしい。
「よろしくな、ピザ男」
「ヒサオだっちゅーの!」
(中編・完。やられと関係ない場面ばっかりでスマソ)


















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