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作者:二代目スレ70氏
投稿日時:2006/09/08(金) 05:12:35
備考:良子の策によって女淫兵たちが変異。セックスバトルは血みどろの戦いに取って代わられ、主人公も窮地に・・・


 押入れの中で彼女が泣いている。膝を抱えて座り込み、子供のように体をゆすり、肩を小刻みに震わせて。
俺が最初に殺した、あの彼女が。俺はそれを、アパートの自分の部屋の真ん中に座って見ているだけだ。
「どうして泣いてるんだい」
 ひどくぼやけた俺の声に、彼女は顔をくしゃくしゃにしながら答えた。
「だから……だから逃げてって言ったのに……東京から逃げてって言ったのに」
 それだけ言うと顔を膝の間に埋め、ひとりごちながら激しい嗚咽を繰り返す。
「もう間に合わない……みんな死ぬ……貴方も死んでしまう!」
「泣かないで。泣かないでくれよ」
 俺はゆっくりと立ち上がり、彼女のそばへ寄ろうと一歩を踏み出した。
 途端、部屋の電気が消えた。周囲は闇に包まれ、自分の鼻先さえわからない。俺は仕方なく手探りでスイッチをつけた。
 明るくなって振り返ると、俺は女淫兵にかこまれていた。
 すごい数だ。俺のまわりだけ少し空けて、見渡す限りの女淫兵。地平線まで彼女らが埋め尽くしている。
 一体どうやって、いつの間に入り込んだのだろう。いや、それより俺の部屋はこんなに広くないはずだ。
 軽く混乱しつつも俺は腹に手をやり、そこで初めて気付いた。変身ベルトがない。
「逃げてって言ったのに」
「せっかく逃げてっていったのに」
「逃げてって言ったのに逃げてって言ったのに言ったのに」
 口々に低くつぶやきながら、彼女らが俺に手を伸ばしてくる。無数の手が俺を掴み、渾身の力で締め上げる。
 彼女たちは目を見開き、瞳を赤く光らせて、徐々に俺に向かって詰め寄ってきた。
 と同時にどこかで重苦しい鐘が鳴り出し、それが合図だったかのように彼女ら全員が笑い出す。
「逃げてあははははは言ったのに言ったのにあはははははははは」
「あはははははははははははははははは逃げてって言ったのにあははははははははははははは」
「あはははははははははははは逃げあははははははははははははは言ったあはははははははははははははは」
 俺を掴む手はますます増え、そのどれもが俺を激しく引っ張る。もう体がバラバラになりそうだ。
「たのむ……やめてくれ……どうしてこんなことを……」
 俺の発した弱弱しい声は、彼女たちの甲高い笑い声にかき消された。

「……き……ゆうき…………裕樹! おい起きろ、裕樹!」
 胸倉掴まれて揺り起こされ、俺の意識が現実に戻って来るまで、少しの時間を要した。
 俺が寝ているのはホテルのベッドの上で、目の前にはピザ男がいる。
「なんだよ、もう朝か?」
 起き上がりながら枕元の時計を見ると、まだ夜中の三時だ。
「勘弁しろよ、こんな時間に……」
「いいから窓の外見ろ! 大変なんだ!」
 ピザ男はそれだけ言うと、脂っぽい汗を降り飛ばしながらドタバタ走っていった。
「どうしたってんだ、一体」
 起き抜けの不機嫌な面でノロノロと窓のカーテンをめくった俺は、眼下に広がる光景を見てこう思った。
「なんだー、これも夢かぁ……」
 とにかく眠いので横になろうとして、俺はふと妙な事実に気づいた。普通、夢の中で眠いか?
 もう一度、今度は深呼吸して脳みそをしっかり動かしながら、カーテンをめくって下を見てみた。
 青いロングヘアの女が、道幅いっぱいに並んで行進してくる。道路はもはや見えず、上から見えるのは見渡す限りの青い頭。
 一糸乱れぬザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッという足音が、俺のいる四階の客室まで響いてくる。
 夜の光を浴びて輝く青が、このホテル目指して押し寄せてくる。まるで津波だ。
 恐怖にかられながらもパジャマを剥ぎ取ってズボンを穿いただけの姿で変身ベルトを持ち、
一足飛びに階段を駆け下りると、一階ロビーはすでに戦場と化していた。
 ソファーには血塗れの負傷者が寝かされ、手当てもされぬまま放置されて呻いている。
 片隅では、あのガラの悪い連中のうち二人が必死になって壊れた何かを直していた。
「信じられねぇ! メト沢が出撃して五分でバラバラにされた!」
「早く直せ! こいつがいなきゃ話になんねぇぞ!」
 手当たり次第に部品をくっつけているが、どう見てもメト沢の部品とは違うものが混じっている。タイヤとか。
 そして俺が夢の中で鐘の音と思っていたのは、外から聞こえてくる砲声だった。
 タイガー戦車がホテル前の道に陣取り、しきりと砲撃を繰り返している。
 警官たちはそれに負けじと無線や電話に怒鳴っているが、うまくいかないらしい。
「もしもし、もしもーし! ……ダメだ、四谷の仮本部との連絡が途絶えた!」
「奴らに飲み込まれたんだ! 自衛隊との通信はまだ繋がらないのか!」
 必死でノートパソコンや回線をいじっているピザ男の姿もある。
 どうやら誰も状況を説明する余裕がなさそうなので、俺は仕方なくメト沢を修理している二人に近寄った。
「なあ、一体何が起きたんだ!」
「女淫兵どもが変異しやがった! 今度のはものすごく硬ぇぞ、五発は撃たないと死なねぇ!」
「やっぱりメト沢ビーム砲がないとダメだ! ……あれはもう女淫兵じゃねえ……〃邪神兵〃だ……」
 それ以上は教えてくれそうにない空気だったので、俺は変身ベルトのスイッチを入れつつ外に飛び出した。

その次の瞬間、俺は侵攻してくる途方もない敵のど真ん中に佇んでいた。
 白ベースボディと黒い手袋、下半身はわずかに女淫兵の名残を残しているが、全くの別物と言っていい。
 右を向いても邪神兵、左を向いても邪神兵、正面を向いても邪神兵。目を赤く不気味に光らせて、
一様に意味不明な微笑みを顔に貼り付け、一糸乱れぬモデル歩きでゆっくり近寄ってくる。
 視界が闇に消える遥かな先まで、隊列がずっと続いていて最後尾が見えない。
 ホテル玄関すぐ右側では初期型タイガーが、砲塔を縦横無尽に振りながら狂ったように撃ち続けている。
 主砲の横には、昨日俺が通風孔から覗いた全身タイツ男が。
「――焼き払えッ!」
 彼が腕を振り上げるたび88mmアハトアハトが火を吹き、邪神兵の最前列がバラバラになって吹き飛ぶ。
 だが彼女らは砲撃で空いた空間をすぐさま塞ぎ、倒れた仲間を構いもせず、ハイヒールで踏みつけてひたすら行進してくる。
「なぎ払えッ! どうした、それでもヨーロッパを血に染めた虐殺兵器かッ!」
「うっせー、だいぶガタが来た骨董品なんだぞ! 良子ちゃんに無理言って取り寄せたんだからな!」
 言い争うモヒカンとタイツを無視し、ひたすら土嚢のバリケードから重機銃を乱射しているのが金髪のオールバック。
 正面の道を見ると、銀髪の少女が手から黒い玉を出しながら戦っている。今日は水銀灯風ではなく、ブレザー制服だ。
 どういう原理か知らないが、玉で邪神兵を十数人づつまとめて威勢よく吹き飛ばしている。
 討ちもらして接近する一人か二人の邪神兵は、あのやつれ美人が格闘で倒すという按配だ。
 今のところ、この二方向への加勢は必要ない。大丈夫だ。しかし続けて左の道を見た俺は、あまりの危うさに目を疑った。
 僅か数人の黒BDと警官が、パトカーを盾に自動小銃やショットガンを乱射している。
 既に何度か撤退を繰り返したらしく、邪神兵の間にひっくり返った装甲車が見える。
 圧倒的な数で徐々に押し切られ、ホテル前まで残すところ百数十メートル。俺が走り寄ると、うちの一人が気づいて叫んだ。
「撃ち方やめろ、ライダーが出るぞ!」
 彼らを通り過ぎ、俺はジャンプして空中で触手を展開すると、着地と同時に最前列を絡め取った。
「尋常に勝負だっ! 片っ端から逝かせてやる!」

 俺は今まで通りセックスバトルを挑むつもりでいたが、彼女らの反応を見てたじろいだ。
 全員、キョトンとした顔で自分の股間にうごめく触手を一瞥した後、おかしくて堪らないというように笑い出したのだ。
「ははははははは! お前、畏れ多くも我を犯すと申すか」
「はははこやつめ! あははははははははこやつめ!」
 傲慢さを含んだ、凛としてエコーがかかった声で一斉に笑い出し、締め付ける俺の触手を難なく外した。
「なにっ!?」
 それだけではない。信じられない位に大きく口を開き、上下の牙で合金製の触手をバリバリ噛み千切った。
 人工筋肉がぶった切られ、ライダースーツの神経スキャンデバイスから痛みが逆流し、俺の口から思わず絶叫が漏れる。
「ぐわぁぁああーーーっ!」
 股間だけでなく脊椎や腕にも激しい痛みが何度も何度も押し寄せ、俺は身をよじってもがき苦しんだ。
 激痛のあまり立っていられない。羽をもがれた虫のようになった俺を、彼女らが半円に囲む。
「ほほほほ、愚か者めが」
「ほほほほほほ、脆弱なる人間どもめ。邪神の前にひれ伏すがいい」
 動けない俺を口々に嘲る彼女らの中から、ポニーテールの個体が進み出て俺の前に立った。
 この髪型ということは、元は士官クラスの女淫兵が変化したのだろうか。右腕に何か巨大な武器がついている。
「どれ、死ぬ前に見せてやろう。我ら邪神の力を」
 カシャンと音を立てて武器が作動を初め、見る見るうちに中心部分の銃身が青い光を帯びてゆく。
 それが何なのか理解した時、俺はホテルのほうへいざりながら叫んだ。
「レ……レールガン……レールガンだ! 戦車を下げろ! 戦車を下げろぉーーッ!」
 俺の叫びも虚しく、青いポニーテールの邪神兵はレールガンを発射した。
 バシュッと辺りに閃光が満ち、これまで右翼を守っていたタイガー戦車の後部にボゴンと穴が開く。
 灰色の車体が少し前に移動するのと、砲塔の上で言い争っていたタイツとモヒカンが下を見るのはほぼ同時だったろうか。
 その一瞬後、ホテル前道路は炎に包まれた。誰もが戦うのをやめて振り返り、燃え上がる車体と誘爆する砲弾の山を見つめる。
「ぁぁぁあああああっちぃぃぃいいいいいいいい!!」
「んだぁぁぁああああああああああああああああ!!」
 全身火達磨になった戦車の乗員が、黒煙を上げながらホテルに逃げ込んでいく。
「うわっ、冗談じゃねえ! ライダーも戦車もやられたぞ!」
「撤退、撤退! 全員ホテルまで撤退しろ!」
 黒BDの集団は逃げ出したが、警官の一人が動かない。俺を気遣っての事ではなく、恐慌状態に陥っているのだ。
「あ、あははは、あひゃ! あーっひゃっひゃひゃ!」
 狂笑しながらパトカーの横でショットガンの連射を繰り返す彼に、四方から邪神兵がゆっくりと迫る。
「やめろ……やめてくれ……」
 俺が伸ばす手はそれに届かず、ただ無力に宙を掻くだけだ。警官の正面にいる邪神兵が腕を振り上げた。
 ――バシュッ!
 赤い飛沫が散り、パトカーが赤く染まる。たった一突きの手刀に心臓を貫かれて、警官は絶命していた。

 いざりながら逃げる俺に向き直る邪神兵たちを見ながら、俺は不思議にも無感動だった。
 炎上する戦車、転がる死体、主を失ったまま回るパトカーの赤色灯。すべて、あまりにも現実味がなさすぎる。
 俺はここで何をしているのだろう。陥落寸前のベルリンと、どこか異次元の戦争がくっついたような場所で。
 ここは本当に東京だろうか。現実の世界だろうか。まだ夢を見ているんじゃないか。解らない、何も解らない。
 ただ一つ言えるのは……俺は死ぬということだ。味方は既にホテルまで退き、路上には一人も残っていない。
「だから逃げろって言ったのに」
 俺にレールガンを向けた邪神兵が、思い出したように呟いた。そして、にっこりと微笑んだ。
 静かに目を瞑った俺は、次に来るであろう衝撃と痛みに備えて体を硬くした。
 ――バシュッ!
 やがて肉を貫く音が響いたが、おかしな事に痛みがない。緩慢な動きで瞼を開いた俺の目に、眩しい光が差し込む。
 道路から突き出た、銀色に輝く棒が一本。それを追って視線を上げると、棒は邪神兵の股間へと消えている。
「あ……う……!?」
 遅れること数秒、俺は何が起こったか理解した。彼女は下から串刺しにされ、周囲の兵士が驚いている。
 刺された邪神兵は先程までの傲慢な態度を一変させ、驚きと痛みに目を丸くして牙をガチガチ鳴らしていた。
「う、うわあ、うわああああ! がっ……ぐふっ」
 邪神兵がガクリと頭を垂れると、銀の棒はまた前触れもなく地面へ消え、間髪置かずに俺のまわりを超高速で突き上げ始めた。
 ドスドスドスドスドスドスドスドスと小気味良い音が響き、新たに股間を刺された邪神兵が悲鳴を上げる。
「ひぎぃ!」
「ぐえっ!」
「げふぅっ!」
 たちまち数十人がガラクタと化し、その場でバタバタと倒れてゆく。俺の周りが綺麗になると、地面から誰かが飛び出した。
 アスファルトの破片を撒き散らし、槍に変化させた右腕の血を振り落としながら俺の前に降り立ったのは……
「ダークキッド!」

「すまん。ちょいと用事があったんでな、帰りが遅れた」
 黒スーツにワイシャツ、青いネクタイをしてボストンバッグを担いでいる彼は、会社帰りのリーマンにも見えてしまう。
 右の袖から伸びるでっかいスピアと、血のように真っ赤な眼球さえなければ。
「これ、持っててくれ」
「えっ?」
 ずしりと重いバッグを俺に投げ、彼はズボンのベルトをいじった。よく見ると変身ベルトによく似ている。
 〃チュイーン〃という充電の音が終わらぬうちに、彼はベルトに向かって命令した。
「ライダーキック」
 レストランで注文でもするように言い放つダークキッドの両足が、見る見るうちに青い炎に包まれた。
 彼はそのまま走るでもなく、行進してくる邪神兵の前にスタスタ歩いていく。
 そしてパッと飛び上がると、いきなり空中から急降下して最前列の邪神兵の胸を蹴った。
 ――ドゴォォッ!
 衝撃波が隊列に沿って広がり、居並ぶ邪神兵を突き抜けてゆく。
 連鎖は留まる所を知らず、遥か後ろの邪神兵まで胸から火花を散らして次々と爆発する。
 ドミノ倒しのようになった彼女らを見届けもせず、彼は正面と右方向へも同じ事を繰り返した。
 蹴られて舞い上がった邪神兵はバラバラになりながら、ある者はその場で安物の花火のように爆発し、
ある者はビルの窓を突き破って下半身を壁に垂らし、またある者は無傷の仲間を壊しつつ吹っ飛んでいく。
 三方向が見渡す限り残骸ばかりになったのを確認すると、彼は駆け足で戻ってきて俺を引っ張り上げた。
「立てるか? これで少しは時間が稼げたが、そうのんびりもしていられないぞ」
「あ、ああ……」
 俺はというと、バッグを抱えて呆然とするしかなかった。最初に会って以来、彼のすさまじさには度肝を抜かれっぱなしだ。
 一体彼は誰にいつ、何の目的でもって、こんなに人間ばなれした改造をしてもらったんだ?
 助けてもらっておいて失礼な話だが、ともすれが彼は恐ろしい化物にも思えてしまう。
 もしかしたらそれが、彼があまり人と積極的に関わらない理由なのかもしれない……
 そんな思いをひた隠しにしながらホテルに向かって歩き出そうとした時、上からローターの回る音が降ってきた。
 二人で夜空を見上げると、今まさにホテル屋上から、警視庁のヘリが飛び立つところだった。
 それを追いかけてフェンスに激突した黒BDの連中が、ヘリに向かって口汚く罵り、あまつさえ銃撃している。
「てめぇこの野郎、戻って来い腰抜けー!」
「チキンがぁー! 敵前逃亡は重罪だ、貴様それでも軍人かぁー!」
「おーやおや……どうやら副総監殿は俺達を見捨ててトンズラあそばすらしい」
 げっそりした様子で苦笑するダークキッドに釣られて、俺も苦笑いを浮かべた。


















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